【インタビュー】期間限定で先行配信される『マンハント』。視聴数最大化の戦略とは
【インタビュー】期間限定で先行配信される『マンハント』。視聴数最大化の戦略とは
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2018/04/18
ブログ

【インタビュー】期間限定で先行配信される『マンハント』。視聴数最大化の戦略とは

ジョン・ウー監督、福山雅治、チャン・ハンユー主演の『マンハント』が、4月18日より、U-NEXTにて配信開始されます。4週間の期間限定、かつ、通常のレンタル配信時よりは少々高めの1000円(税込)での配信ながら、2月9日に全国250館以上の規模で公開された話題作を、わずか68日後に自宅で観られるとは、驚きです。劇場公開後、ファーストランが一巡した後の「二番館的」ウインドウ(封切館での上映が終了した後のムーブオーバー)のタイミングとも言え、劇場で見逃してしまった方にとっても朗報と言えるでしょう。

そこでU-NEXTでは、この施策を行なっているギャガ株式会社に、その背景と戦略をおうかがいしました。

劇場公開からわずか68日で『マンハント』が配信

現在、動画配信のウインドウは、大きく4つに分けられます。

  1. 先行配信(購入):一度購入すると期間制限なく観られる「購入型」。一部洋画作品では、「2」の「先行配信(レンタル)」よりも早く配信されるケースが多い。
  2. 先行配信(レンタル):視聴期間が設けられている「レンタル型」、かつDVD&Blu-rayの販売・レンタルより先行する場合。先行期間中は、通常価格よりも高額で提供されることが多い。
  3. パッケージ同発配信:DVD&Blu-rayの販売・レンタルと同日から配信開始されるケース。多くの作品では、パッケージと同発が主流。
  4. パッケージ先行配信:DVD&Blu-rayが先行して販売・レンタルされるケース。

今回配信される『マンハント』は「2」で、かつ

  • 先行配信は4週間の期間限定(その後、通常配信を予定)
  • 劇場公開からのウインドウがわずか68日と非常に早い

という点が大きな特徴です。

さて、この販売戦略は、どのように生まれたのでしょうか。

『砂上の法廷』から始まった、作品としての視聴者数最大化

今回『マンハント』を提供してくださるギャガさんは、過去にU-NEXTで、通常配信の前に「二番館的」ウインドウで先行配信を行いました。そこで、ギャガ株式会社 映像事業部 TV版権・配信営業グループの井花俊介氏に、トライアルとしてスタートした『砂上の法廷』から『マンハント』まで、その経緯と戦略についてお聞きしました。

−−二番館的なウインドウでスタートする先行配信は、キアヌ・リーヴス主演の『砂上の法廷』が初めてと記憶しています。当時、かなり思い切った施策と感じました。

井花氏:期間限定ではありますが、『砂上の法廷』では通常配信に先駆けて、希望小売価格1000円(税込)で先行配信を行いました。視聴意欲が高いにもかかわらず、上映期間中にタイミングがあわなかったり、近くに映画館がなかったり、いろいろな理由で観たいのに観られないお客様が多いと思われたので、DVDの発売・レンタルよりも早いタイミングで作品を楽しめる環境を整えたい、と。また、劇場公開が3月だったので、配信のトラフィックが上がるGWに合わせて提供したいと考え、5月には配信を開始しました。

−−キアヌ・リーヴス主演作で思い切った施策をされる、と注目されましたよね。

井花氏:そうですね、キャストバリューは作品を観るきっかけになりますから、第1弾作品としてもよかったですね。当初はトライアルという位置づけだったので、プラットフォームを限定して先行配信を行いました。

−−以降ギャガさんは、『フレンチ・ラン』『ザ・サークル』と、同様の取り組みが続いています(下表参照)。この施策自体が好調ということでしょうか。

井花氏:まだ事例が少ないですし、興行規模やジャンル、配信時期も異なるので、正直判断は難しいです。ただ、配信までのウインドウが短いと、先行配信時の売上シェアはより高くなります。『ザ・サークル』は劇場公開から約2カ月後に先行配信し好調な印象だったので、今後もより大きな作品で検証していきたいという思いはあります。劇場公開時にそれなりの宣伝費を投下して各メディアで紹介いただけたので、その記憶が残っているうちにご提供したい。そのための最適なウインドウも模索中です。

−−では、早く観られるなら、多少高くてもいいと思っている方がいるということですね?

井花氏:より視聴意欲が高いコアなお客様と、通常の価格になってからでいいという意味でのライトなお客様と、両方いらっしゃる印象です。

−−ギャガさんは数多くの作品をお持ちですが、先行配信をされる作品のポイントはなんでしょうか。

井花氏:まずは、ジャンルとキャストが大事ですね。じっくり観たい良質なドラマ作品では、興行も比較的長いですし、弊社としても映画館でご覧いただきたいという思いもあります。逆にエンタメ系作品は、配信サービスとの親和性がより高いようです。生活環境に合わせて観たい時に観られる、というのも配信サービスの魅力ですよね。劇場で観る方と、配信で観る方、必ずしも一緒ではないと思うので、お客様の住み分けもできているのではないでしょうか。

−−先行配信を期間限定としていることもポイントですか。

井花氏:そうですね。期間限定とすることで、その期間にしっかり観ていただきたいという思いもあります。また、先行配信と通常配信、プロモーションのタイミングを2回作れるのも大きなメリットです。

−−弊社では、先行配信の購入数は『ザ・サークル』『砂上の法廷』『フレンチ・ラン』の順となっています。

井花氏:ジャンルとキャストバリューが大きいでしょうね。またU-NEXTさんでは、サービス内でもプロモーションをしていただけるので非常にありがたいです。

−−こちらこそうれしいです、ありがとうございます(笑)。今回、250館以上の大作『マンハント』でも先行配信されるということは、今後の作品でも期待していいのでしょうか?

井花氏:おかげさまで弊社は作品数は増えておりますが、1本1本丁寧に販売していきたいと思っています。『マンハント』はジョン・ウー監督、福山雅治、チャン・ハンユー主演の作品でアクションももりだくさんなので、配信では、劇場でご覧になった方もまだの方もお楽しみいただけるとうれしいです。弊社では、公開規模にこだわらず、より多くの人に観ていただける環境を整えていきたいと思っていますのでぜひご期待ください。

井花さんのお話をうかがっていると、ウインドウごとにお客様を奪い合うのではなく、作品全体を俯瞰して視聴者数を最大化したいという思いが伝わってきます。もちろんこれは、自社で配給から配信までを担っているからこそだとは思いますが、お客様の利用シーンやニーズに合わせて選択肢が増えることは、市場にとっても歓迎すべきことでしょう。弊社も最大限の努力でこのトライアルを応援し、お客様のニーズに応えていきたいと思っています。

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